絶望の工場試作品

絶望の工場試作品

この味で、長持ちする製品をつくってください!

運よくパートナー工場を探し当てたプロジェクトNagara。

早速委託先の工場長へウキウキで事業の話を展開。忙しくても美味しい食事を食べられるようにしたいこと、その試作品が出来ていて、評価をいただいていること等を語ったのち、具体的な段取りや条件の確認作業に入りました。

ところで、食品の商品性を決める大きな要素の一つに保存性が挙げられます。

Nagaraのコンセプトの要諦は「いつでもどこでも食べられる」という部分。要冷蔵や冷凍品では目的達成が困難です。常温で長い間保存できるかどうかが一番の気がかりでした。

問いかけに対して工場長は「うちはレトルト殺菌工程を持っているので全然出来ますよ」と、余裕の返答。

よしよし、いい感じ。どうやらやりたいことが出来そうだぞ。

「ただ、レトルト加熱殺菌をすると味は結構変わっちゃうんで調整は必要かも知れないですね」と工場長。

なるほど?まあ調整をする位なら任せておきなさい。家で何回試作をしたと思っているんですか。

そんなやや高慢な気持ちで軽く考えていましたし、シェフ岡嶋とも「ひたすら煮込むみたいな加熱でも、味はそこまで変わらないことは確かめている」という話をしてくれていました。

 

できあがるボクノシラナイリョウリ

ものは試し。まずはこちらの手作りサンプルとレシピを渡し、工場側に試作をしてもらうこととしました。

指定の材料で、指定のレシピで作ってもらい、最後にレトルト加熱殺菌工程を挟んだらもう完成です。はじめてお話をしてから1か月足らずで工場で作ったサンプルを入手できました。

さて、肝心のお味はどうかな...?とドキドキしながら口に入れた瞬間、ドキドキは期待をはらんだ高鳴りから、パニックの動悸へと変わります。

「なんだこれ、、、ぜんっぜん美味しくない!!!」

シェフがレシピを組んで、試食会で絶賛された味は見る影もなく、そこにあったのはボクノシラナイリョウリでした。旨味や甘味はあきらかに無くなり、食感もぼそぼそ。でもやたらと塩辛い。とてもじゃないけどお客さまに出して良い品ではありませんでした。

僕たちはレトルト加工による味の変化を舐めていました。
「レトルト」というと何らかの特別な防腐処理や添加材等による殺菌を想像される方も多いと思います。
しかし実体はただの加圧加熱殺菌。加圧することで100度を超える温度環境を作り出し、その熱でほとんど全ての菌を死滅させる手法です。簡単にいうと「高温の圧力釜で殺菌処理をしている」というとイメージしやすいでしょうか。

レトルト加熱の想像以上の味への影響に途方にくれるPJチーム。

一難去ってまた一難。本当に課題が尽きない楽しい開発過程を歩んでいるなと思います。

 

つづく

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