なにを作ればいいんだっけ?
起業を決意し、作りたいものが見つかった。けれどもそれが具体的にどんな形をしているのかわかりません。
「忙しくても、美味しさをあきらめない」これを実現するためにはどんな食品があればよいのだろうか?
この問いに答えるための暗中模索の日々が始まりました。
まず手をつけたのは既存製品の調査です。
現在市場にある、携行食品の類を端から順に食べて回りました。
カロリーバー、プロテインバー、シリアルバー、豆腐バー、ビーフジャーキー、サラダチキン、ゼリー飲料、ヨーグルト飲料、スムージー。
便利な世の中です。現在も「忙しい人が片手間に食べれる」という要件を満たしている製品は数多く存在します。
そして、「抜群に美味しい!」というものはないものの、それぞれのクオリティも悪くない。
それでも、何故だかほとんどの商品に物足りなさを感じてしまいます。
僕もカロリーバーは好んで口にしますが、「これをお昼ご飯にして生活せよ」と言われたら暴動を起こす自信があります。
色々口にするうちに、この原因は「食事感の欠如」なのではないか?という仮説が浮かびました。
小腹を満たす。栄養を取る。そういった要望は満たすけれど、良質な食事をとった後のあの何とも言えない満足感を持っているハンディフードはほぼないんじゃないかと思い至りました。
食事感を求めた迷走劇。
では逆に食事を食事足らしめている要素は何だろう?という問いに対して、まず出た答えが「おかずとご飯」でした。
ハンディタイプの食品を食べる時、基本的には単品で食べますし、中身も均一なものが多い。
であれば、炭水化物である主食と肉等の主菜を一つにまとめたハンディフードを作ってみよう。方針が決まればあとはやるだけ。
しかしながら、ここからは惨憺たる試作品が多数誕生することとなりました。
①焼肉×クレープwith焼肉のたれ
雑に美味しい。しかし保存性が皆無。不採用。
②ベーコン×モチスティック
おつまみとしては非常にアリ。ビールと合う。しかし冷めると固まる。NG。そもそもつまみを作りたいわけではない。
③米粉で作った自家製せんべい
(になりたかったナニカ)
固くて全然美味しくない。というか形が全然作れない。論外。
元実験屋の血が騒ぐ
そのほかにも、そば粉クレープや大量グルテンスコーンなど、数々の個性的なお味の品々を生み出しては、泣きながら食べていました。
でも、実験をして、ネットで調べてを繰り返しているうちに少しづつわかることはあって、その過程にとてもわくわくしていることに気づきます。
僕はもともと化学専攻の技術者です。
仮説に基づき、色々なものを混ぜては試し、混ぜては試しをしながら正解に、にじり寄る行為自体は得意な方なのです。
今までと全然違う分野なのに、今までの経験が活きる感覚にも興奮しますし、そして何より、新しいことに挑戦するのはいつだって楽しいものです。
見えてきた製品仮説
食の満足感には味の複雑性が必要説。
既存のハンディフードを中心に種々検討を行った結果、一つの結論を得ました。
「美味しい食事や高級な食事には複雑性があるが、市販のハンディフードにはそれがない。」というものです。
例えば、有名ラーメン店とカップラーメンのスープの違いを考えた時に、明らかに違いを感じるのは味の”深さ”です。
美味しいラーメンは様々な材料のダシやタレを使います。そして旨味、塩味、甘味、香りなどが幾重にも複雑に重なり経時的に変化する。これこそが格別の味わいを生み出すのです。よくよくグルメ漫画等で「ハーモニー」という表現が使われるのも納得ですね。
一方でカップラーメンの味はまずいわけではないですが、単一で深みがありません。
塩分量や旨味成分の量はもしかしたら同等かもしれませんが、単一であるがゆえに舌への、ひいては脳への刺激に乏しいのかも知れないと考えています。
こういった複雑性の欠如は、多くのハンディフードに見られます。つまり裏を返せば、複雑な味わいを持った商品を作れば、頭一つ抜けた美味しさを実現できるのではないか?と考えました。
たどり着いたのはハンディスープ
そうしてたどり着いた答えの一つが「ハンディスープ」です。
発想のベースは「10秒チャージ」でおなじみのあのゼリー飲料。持ち運べ、どこでも味わうことができるあのパッケージの中に、とっても美味しい冷製ポタージュスープを入れたら素晴らしい商品になるのではないか?そう考えました。
そしてスープ自体、一見単一に見えますが、実はやりこみがいのある料理なんです。
野菜、果物、ブイヨン、調味料、スパイスのそれぞれが織りなす味わいと風味、ピューレの食感。本格的に作られたスープはそれこそ複雑性の極みです。高級レストランで食べるスープとカップスープは別物のように感じますし、事実、帝国ホテルでは”ダブルコンソメスープ”が名物料理として長年愛されています。
忙しい時の朝ごはん、いつものランチを華やかに、罪悪感なしの夜食としても。
とびきり美味しい冷製スープがいつでもどこでも味わえるという提案が、みなさまの日々の暮らしを少し豊かにすると信じています。
現在のNagaraハンディスープの形がおぼろげながらも見えた瞬間でした。
つづく。